石見神楽
温泉津『海神楽』2007/08/22
島根県大田市温泉津町の福光海岸で行われた海神楽
日が沈む直前 | 左と同じ写真を編集無しで |
「龍神」という『創作神楽』の一場面 | 同じく |
これは(^^ゞ | これは「大江山」の一場面かな? |
これは「大江山」の鬼、酒呑童子 | 同じく |
こちらは頼光主従が酒呑童子と会話している場面 | 前の人の頭が(^^ゞ |
これまた酒呑童子 | 酒呑童子に口上を述べる頼光 |
酒呑童子に挑みかかる頼光主従 | 同じく |
切り倒しとどめをさして颯爽と振り返る | 場面は変わって「恵比寿大黒」のえびすさま |
だいこくさま | 踊りまくる大黒様 |
大黒さまと後ろに写っているのはえびすさま | 親子競演?の一幕 |
日が落ちきる前だとかなり暑いというので、日が沈む直前に見物に行った。 神楽は日没前から始まっており、ついた頃にはもう後半だった。 場所や飲み物の確保のためしっかり見物できたのは終盤の3演目、 「大江山」「恵比寿大黒」「大蛇」だ。 落ち着いて席についたころには完全に日が落ちていた。 ちょうど「大江山」という演目くらいから、カメラを片手にじっくりと見ることができた。 石見神楽というのは、神話や巷間に広まった伝説・伝承を舞台化した伝統芸能だ。 他の地区の神楽と比べてとにかく勇壮でリズムが早く、テンポの良い神楽である。 大江山の鬼退治、清正の虎退治など誰でも知っているような昔話的な題材も多く、 親しみやすいのも特徴の一つだ。 基本的に神事の一つとして行われるため興行ではなく「奉納」という形になる。 大きな神社や集落の中心的祭祀を担ってきた神社には、今でも『奉納舞台』が そのまま残されているところも多い。 奉納舞台や神楽殿などといった場所で奉納されたものだったのだろう。 本来は、各地区の祭礼の一部として伝わっていたので、季節の祭礼の夜に 夜通し神楽を行うというパターンが多かったらしいが、昨今は観光資源の一つ としても活用され、島根県内観光地や人の集まる場所などに行くと週に一回 くらいのペースで公演されている。とくに夏休みの時期はあちこちで、いろんな 社中による石見神楽が演じられることになる。 石見神楽に関しては下記アドレスの島根県浜田市が運営しているページが 詳しいので、こちらをご参照下さい。 http://www.city.hamada.shimane.jp/emachi/ 各地区の集まりや神社の氏子の集まりから「社中」「連中」「保存会」などの 有志を結成し「石見神楽の」保存、継承、公開に努めているのである。 簡単にいうと「神楽好き」な人々が集まって踊り、舞い、謡っているのである。 今回、私が見物したのは 『石見神楽温泉津舞子連中』と 『京都造形芸術大学学生』 が演じる「海神楽」である。今年で三回目の催しだそうだ。 温泉津町内にある福光海岸という海水浴場で日本海をバックに神楽が行われるのだ。 石見神楽はビデオ映像などでは観たことがあるが、生で見るのは初めてだった。 |
最後の演目は大盛り上がりの「大蛇」
八体が連なってとぐろを巻く | とぐろ状態で八匹の大蛇がまわってます |
まだまわってます、つっつく子供たち | いろんな色をした八体のオロチが一匹ずつに分離 |
八体が勢ぞろいしての顔見世 | おおよろこびのこどもたち |
再び大蛇が動き出します | かんなび山型のとぐろまき体勢 |
後ろのは縦回りしている状態です | 縦回りがわかるでしょうか? |
ただ立ってるだけじゃなくまわってます。 | 白蛇の顔のアップ |
ミドリのへび | 青蛇だけに青大将 |
青と赤の競演、まるでウルトラマンの怪獣の様 | 八体が絡まり瀧のように見える |
またまた体勢が変化 | じわじわとまた激しく体勢が入れ替わる |
現れたスサノヲがオロチに囲まれる | 酔いがまわったオロチ、スサノヲ反撃開始 |
逃げ惑うオロチ | 次々と首を落とされ残り2匹となりました |
もったいないことに、最後の場面の直前でカメラのバッテリーがなくなりました(^^ゞ 最後は八体全てのオロチの首を切り落とし、八個の首を舞台の前に並べポーズをきめて そこへテナヅチ、アシナヅチにイナダヒメが現れ舞い踊り大団円となる。 神話をテーマにしたものが多い石見神楽だが、厳粛とした雰囲気ではなく「娯楽」である。 まさにウルトラマンと怪獣の戦い、、仮面ライダーと怪人の戦いそのものである。 ヒーローであるスサノヲらは厳しい面を被ってはいるが、弱きを助け、知恵を尽くし悪の強敵を倒す という勧善懲悪パターンである。 酒呑童子のような鬼童子といえば、迷探偵コーナーの用明天皇の謎でも取り上げたように親と 生き別れたか親を亡くした子供です。 そもそも「○○童子」とは「御仏に仕える子供」のことだそうで、不動明王に付き従う童子は有名 ですね。ですから、鬼とされる童子たちもお寺に仕えていたか寺院で育てられた孤児のことなのです。 今回見物した「大江山」のストーリーの中にも酒呑童子は仏弟子を名乗る者には必ず面会する、 という設定があったので、元々は彼らも仏弟子であり、鬼と呼ばれるようになってからも仏教への 信仰を捨ててないことが伺われます。 簡単にストーリーを追ってみると。。。 里人に悪害をなし大江山にこもる酒呑童子を、帝の命により源頼光らが退治することになる。 頼光、渡辺綱、きんたろうこと坂田金時の三人が天狗から神変鬼毒酒という毒酒をさずかり、 それを童子らに飲ませ、彼らが酔っ払い毒が回ったとこを退治するというもの。 この神変鬼毒酒という天狗の酒は『人には薬、鬼には毒』という都合の良い毒酒である。 頼光は童子との会話の中でこの酒を童子に勧めるわけだが、自ら「毒見」をし呑むところ を見せることによって童子らにこの毒酒を飲ませるという作戦をまんまと成功させるのである。 頼光主従は天狗からに『童子は仏弟子を名乗る者には礼儀を尽くす』という話を聞き、 山伏に変装し大江山に向かう。そこで童子たちと出会い、仏弟子だということを心底信じ きってない童子たちから色々と尋問をされる。このあたりの問答のやり取りは 『弁慶の勧進帳』と似ているのかな。見ているものがばれないようにとハラハラさせる展開。 頼光らは尋問に対し全てに首尾よく答え、この問答を通して童子たちはやっと信用する。 で、神変鬼毒酒を飲ますという段取りになるのだ。。。。 注・今回の海神楽では神変鬼毒酒ではなく、地元の銘酒の名が使われて宣伝に一役買ってました(^^ゞ まあ、ヤマタノオロチとそっくり、また神武の大和入とそっくりな展開である。 少人数で近寄ってとりいって油断させて斬る。 逆にいうと油断させないと勝てないといっているようなものなのだ。 もしくは大軍でもって挑みかかる必要があるような敵ではないという事。 絶対正義の帝と頼光という最初の設定がないと、どちらが悪者かわかったものではない。 鬼の面を被って怖そうだから悪ということなのか。童子の伝説を調べると生まれたときから 異常だったということが強調される 「大蛇」に出てくるスサノヲの面だってかなり怖い。 ヤマタノオロチだって、酒呑童子だって実際にあった話をもとに成立したんであって、どっちも 本来はただの人間だとしたらこの人たちにもそれぞれに仲間がいて、生活があって、思いがある。 彼らだって生きていたのだ。 逆説的にいうと、『大江山に隠れ住んでた仏教信徒の難民たちを虐殺した事件』ということに なりはしないかとちょっと心配である(^^ゞ 現代なら「大江山の人々の人権を守れ!!」なんて団体が立ち上がったりしたりして(^^ゞ まあ、こういうことを考えないように、「正義」というか「勧善懲悪」という概念は必要なんだろうなぁ。 本来の酒呑童子が本当に悪かろうが悪くなかろうが、事件が終り討伐され殺されてしまったが最後、 酒呑童子は悪い奴だったということにしておかないと丸く収まらないってことなのかも。 これもまた怨霊信仰の一つのパターンなのか(^^ゞ 少しだけですが、ブログのほうに大蛇の動いている動画をアップしました。 暗くて鮮明ではありませんが、興味のある方はご覧ください。 「大蛇」の動画 初めて生で見た石見神楽は予想以上に面白く、また楽しいものでした。 3演目で2時間くらいだったと思うのですが、あっという間に終ってしまった感じでした。 また機会があれば、石見神楽を見物したいと思います。 |
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